Mrs. GREEN APPLEの「Variety」は、10年という長い活動期間を振り返りながら、これまでの自分たちが抱えてきた未熟さや孤独、愛されたいという願い、そして未来へ向かって歌い続ける決意を描いた楽曲だと考えられます。
2025年に開催された10周年記念ライブで初披露され、2026年に発売されたアルバム『POPS』の最後を飾る楽曲として収録された「Variety」。
さらに注目したいのが、タイトルが2015年にリリースされたMrs. GREEN APPLEのメジャーデビューミニアルバムと同じ「Variety」であることです。
つまり、この曲は単なる新曲ではありません。
10年前に「Variety」という名前でスタートしたMrs. GREEN APPLEが、10年後の現在から自分たちの原点を見つめ直すような楽曲になっているのではないでしょうか。
ここでは「Variety」の歌詞に込められた意味を、曲全体の流れから考察していきます。
「Variety」が描いているのは10年間の歩み
「Variety」を読み解くうえで、まず重要なのがタイトルです。
2015年のメジャーデビューミニアルバムと同じタイトルを持つことで、10年前と現在が一本の線でつながっています。
10年前にはまだ若く、これから何者になるのかも分からなかった彼ら。
そこから数々の楽曲を生み出し、多くの人に知られる存在になりました。
しかし、10年経ったからといって、すべての不安や迷いがなくなったわけではありません。
むしろ「Variety」では、成功した現在だけを見るのではなく、昔から変わらず抱えている感情まで描いているように感じます。
夢を描いた自分と変わらない空
冒頭では、かつて夢を描いていた自分と、現在の景色が重ねられているように読み取れます。
人間は10年も経てば大きく変わります。
考え方も、環境も、周囲の人間関係も変化していきます。
Mrs. GREEN APPLE自身も、10年間の活動の中で大きな変化を経験してきました。
それでも、空や雲のように変わらないものがあります。
この対比からは、「自分は変わった。でも、あの頃に見ていたものは今も存在している」という感覚が伝わってきます。
10年前に夢を描いた自分と、現在の自分。
その二人をつないでいるのが、この「Variety」という楽曲なのかもしれません。
「僕ら」はMrs. GREEN APPLEだけではない?
歌詞には「僕」「僕ら」「私」「私たち」「貴方」「あなた」といった複数の人称が登場します。
ここも、この曲の面白いところです。
「僕ら」をMrs. GREEN APPLEのメンバーとして考えることもできますし、スタッフやファンを含めた「Mrs. GREEN APPLEという存在」と考えることもできます。
さらに聴く人自身を「僕ら」の一人として重ねることもできるでしょう。
だからこそ、「Variety」は10周年を迎えたバンドだけの歌ではなく、聴く人それぞれの10年間にも重ねられる楽曲になっているのだと思います。
1番サビに込められた意味
1番のサビでは、満たされなかった愛や、届かなかった思いなど、人生の中で経験する「うまくいかなかったこと」が描かれています。
しかし、この曲はそれらを失敗として切り捨ててはいません。
届かなかったものも「自分」の一部
人はどうしても、成功した出来事だけを自分の歴史として語りたくなります。
夢が叶った。
誰かに認められた。
大きな舞台に立てた。
そうした出来事は、もちろん大切です。
でも、本当の人生には「届かなかったもの」もたくさんあります。
好きだった人に気持ちが届かなかった。
努力したのに結果が出なかった。
やりたかったことを諦めた。
誰かとの関係が終わってしまった。
「Variety」では、そうした過去も含めて現在の自分が作られているという考え方が表現されているように感じます。
Mrs. GREEN APPLEの10年間にも、すべてが順調だったわけではありません。
だからこそ、華やかな現在だけではなく、迷いや苦しみまで含めて「自分たちの歩み」として受け入れているのでしょう。
それでも今日も歌う
過去を振り返って終わるのではなく、最終的には「今、歌う」という方向へ意識が向かっていきます。
ここが、この曲の大きなポイントです。
「あの頃はよかった」と過去を懐かしむだけではありません。
過去には失敗もあった。
叶わなかったこともあった。
それでも自分たちは現在ここにいて、今日も歌う。
そんな現在進行形の決意が感じられます。
2番サビの意味
2番では、人それぞれ異なる価値観を持っていることや、簡単には優劣を決められない世界が描かれているように思えます。
ここで重要なキーワードとして考えられるのが「秤」です。
他人と比べるための「秤」
私たちは日常生活の中で、無意識に他人と自分を比べています。
どちらが成功しているのか。
どちらが評価されているのか。
どちらの生き方が正しいのか。
SNSなどを見ていると、さらに人と比べる機会は増えていきます。
しかし、本来、人の人生に絶対的な「正解」はありません。
他人から見れば価値がないように思えるものでも、自分にとってはかけがえのないものかもしれない。
その逆もあります。
「Variety」では、そうした価値観の違いを前提にしながら、「自分は何を愛せるのか」という問いを投げかけているように感じます。
「好き」よりも「愛せる」が重要
この曲では、単純に「自分の好きなものを大切にしよう」と歌っているだけではないように思えます。
ポイントは「どれだけ愛せるのか」という部分です。
人から評価されているから好き。
人気があるから好き。
みんなが認めているから好き。
そうではなく、誰かに否定されても、自分にとって大切だと思えるのか。
そこには、自分自身の価値観を信じる強さが必要です。
これは、さまざまな音楽性を取り入れてきたMrs. GREEN APPLE自身の活動にも重ねられます。
一つのジャンルにとどまらず、ロック、ポップス、バラード、ダンスミュージックなど、さまざまな表現を取り入れてきた彼ら。
まさに「Variety」という言葉そのものが、Mrs. GREEN APPLEの音楽を象徴しているとも考えられます。
3番サビに込められた意味
曲が進むにつれて、「Variety」は単なる10周年の回顧から、より個人的な感情へと深く入り込んでいきます。
そこにあるのが、「愛されたい」という願いです。
「誰かの中にいたい」という願い
人は誰でも、誰かに必要とされたいという気持ちを持っています。
誰かに覚えていてほしい。
自分の存在を大切にしてほしい。
誰かの人生の中に残りたい。
こうした感情は恋愛だけに限りません。
友人、家族、仲間、ファンなど、さまざまな人間関係に当てはめることができます。
そして、アーティストにとっては「自分の音楽が誰かの中に残ってほしい」という願いにもつながるでしょう。
Mrs. GREEN APPLEが10年間音楽を続けてきたからこそ、この「誰かの中にいたい」という感情は、とても大きな意味を持つように感じます。
愛されたいからこそ傷つく
一方で、誰かを大切に思えば思うほど、失うことへの恐怖も生まれます。
愛されたい。
でも、嫌われるのが怖い。
信じたい。
でも、裏切られるのが怖い。
つながっていたい。
でも、いつか別れるかもしれない。
「Variety」では、こうした矛盾を無理に解決しようとしていません。
愛を求める気持ちと、それによって傷つく怖さを両方抱えたまま進もうとしています。
この「割り切れなさ」こそ、人間らしさなのではないでしょうか。
「変わることない/変われやしない」の意味

「Variety」の中でも特に印象的なのが、「変わらないこと」と「変われないこと」を思わせる表現です。
一見すると、成長できない自分を嘆いているようにも感じられます。
しかし、別の見方もできます。
10年経っても変わらない「核」
10年経てば、人は当然変わります。
Mrs. GREEN APPLEの音楽も変化してきました。
それでも、根本にある感情までは簡単に変わらない。
誰かに音楽を届けたい。
愛されたい。
誰かを愛したい。
自分たちの音楽を大切にしたい。
そうした気持ちは、10年前も現在も存在しているのではないでしょうか。
だから「変われやしない」という言葉は、必ずしもネガティブではありません。
むしろ、変化していく世界の中で「これだけは失いたくない」という、自分たちの核を示しているようにも読めます。
「代わりはいない」というメッセージ
誰かとの関係は、簡単に別の誰かに置き換えられるものではありません。
メンバーとの関係も、ファンとの関係も、その瞬間にしか存在しないものです。
だからこそ、「今ここにいる人」を大切にする。
この考え方は、10周年という節目だからこそ、より強く響きます。
「わかってほしい」に込められた切実さ

曲の後半では、「愛されたい」という願いが、さらに深い「理解してほしい」という願いへと変わっていくように感じられます。
愛されることと理解されることは違う
「愛される」というのは、相手から好意を受け取ることです。
しかし、「理解される」というのは、自分の弱さや矛盾まで含めて知ってもらうこと。
これは簡単なことではありません。
自分自身ですら、自分の気持ちを完全には理解できないことがあります。
だからこそ、「わかってほしい」という願いには切実さがあります。
傷ついた経験も無駄ではない
この曲では、痛みや傷を単純に消してしまおうとはしていません。
むしろ、苦しかった経験も含めて今の自分につながっていると捉えているように感じます。
失敗したからこそ分かったこと。
傷ついたからこそ生まれた優しさ。
届かなかったからこそ作れた音楽。
そう考えると、過去の痛みは「なかったこと」にするのではなく、自分の一部として抱えていくものになります。
そして、「待っていてほしい」という願いにつながっていく。
完成した自分ではなく、まだ迷っている自分でも待っていてほしい。
そこには、ファンや大切な人たちへのメッセージのような温かさも感じられます。
「果実」が象徴しているもの

「Variety」には、Mrs. GREEN APPLEという名前を連想させる「果実」のイメージも登場します。
この果実は、単なるモチーフではなく、10年間の歩みそのものを象徴しているようにも考えられます。
果実は「成長」の象徴
果実は、種から芽が出て、時間をかけて成長し、やがて実をつけます。
これはMrs. GREEN APPLEの10年間と重なります。
まだ何者でもなかった頃から音楽を続け、作品を生み出し、少しずつ大きくなっていった。
しかし、果実は実った瞬間から永遠にその状態でいられるわけではありません。
いつか落ちる可能性もあります。
そこには、成功や人気が永遠ではないという感覚も重ねられているのではないでしょうか。
実ったからこそ生まれる不安
大きな成功を手に入れれば、失うことへの恐怖も生まれます。
「このまま続けられるのだろうか」
「今の自分たちでいいのだろうか」
「この関係はいつまで続くのだろうか」
そんな不安があったとしても、それでも歌い続ける。
「Variety」に登場する果実は、成長の象徴であると同時に、時間の流れや儚さまで表現しているように感じられます。
ラストに込められた意味

「Variety」の最後では、変わり続ける時代と、それでも変わらないものが対比されます。
これは、10周年を迎えたMrs. GREEN APPLEだからこそ歌えるテーマではないでしょうか。
変わることは悪いことではない
10年前と今では、Mrs. GREEN APPLEの環境は大きく変わりました。
音楽性も変わった。
活動の規模も変わった。
聴いているファンも変わった。
そして、自分たち自身も変わった。
しかし、それは「昔の自分を捨てた」ということではありません。
変化しながら、過去を現在へと受け継いでいく。
それこそが10年間歩き続けるということなのだと思います。
変わらないのは「歌いたい」という気持ち
結局、「Variety」で最も大切なのは、変化そのものではなく、その中で何を残すのかということではないでしょうか。
表現は変わってもいい。
環境も変わっていい。
自分自身も変わっていい。
それでも、「誰かに歌を届けたい」という気持ちは残したい。
過去の自分を否定せず、傷ついた経験も抱えたまま、今日も歌う。
それが、この曲のラストに込められた決意なのだと考察できます。
まとめ|「Variety」は10年分の自分を抱えて歌い続ける曲

Mrs. GREEN APPLEの「Variety」は、10周年を華やかに祝うだけの記念曲ではありません。
そこには、未熟だった過去、届かなかった思い、愛されたいという願い、誰かに理解してほしいという孤独、そして変化していくことへの戸惑いが描かれています。
それでも、過去を否定することはありません。
うまくいかなかったことも。
傷ついたことも。
叶わなかった夢も。
すべてを含めて「今の自分」なのだと受け入れているように感じられます。
そして最後には、変わりゆく時代の中で、それでも歌い続けるという方向へ進んでいきます。
「Variety」というタイトルが、10年前のメジャーデビューミニアルバムと同じであることも、この曲をより特別なものにしています。
10年前に始まった物語を、10年後の自分たちが振り返る。
しかし、それは過去を懐かしむためではありません。
「あの頃の自分たちがいたから、今の自分たちがいる」
そう受け止めたうえで、また未来へ進んでいく。
「Variety」は、そんなMrs. GREEN APPLEの10年間を一つにつなぐ楽曲なのではないでしょうか。
そして、この曲を聴く私たち自身にも、
「10年前の自分は何を夢見ていたのか」
「これまでに届かなかったものは何だったのか」
「それでも今、大切にしたいものは何なのか」
と問いかけてくるように感じます。
変わってしまった自分も、変われなかった自分も、どちらも自分。
そんな過去をすべて抱えたまま、今日を生きていく。
それこそが、「Variety」が伝えているメッセージなのだと考察します。
歌詞の出典元
本記事では著作権上の理由から、歌詞全文の掲載や長文引用は行わず、楽曲の歌詞をもとに内容を要約・考察しています。
楽曲名:Variety
アーティスト:Mrs. GREEN APPLE
作詞:大森元貴
作曲:大森元貴
収録作品:『POPS』
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