あいみょんの「愛を伝えたいだとか」は、軽快なリズムとは裏腹に、とても不器用で切ない恋心を描いた一曲です。
タイトルだけを見るとストレートなラブソングにも思えますが、歌詞を読み解いていくと、主人公は好きな相手に想いを伝えられず、頭の中だけで恋愛を進めてしまう青年であることが見えてきます。
この曲の魅力は、「恋愛の成功」ではなく、「好きなのに行動できないもどかしさ」をリアルに描いている点でしょう。
今回は、「友達以上恋人未満」の女性に恋をした主人公の視点から、「愛を伝えたいだとか」の歌詞を詳しく考察していきます。
「愛を伝えたいだとか」の歌詞が描くテーマ

この楽曲全体を通して描かれているのは、「友達以上恋人未満」の距離感にいる女性へ、本気で恋をしている”僕”の姿です。
彼は一人暮らしの部屋で生活を送りながらも、朝ごはんやソファ、カーテンなど目の前の現実より、好きな女性のことばかり考えています。
しかし、その恋は決して順調ではありません。
付き合っているとは言えないものの仲は良く、彼女のほうはそこまで恋愛感情を持っていないようにも感じられる絶妙な距離感があります。
主人公自身も、自分を「魅力的な男」とは思えておらず、「こう言えば喜ぶかな」「こんな風に愛を伝えたい」と頭の中で何度も恋愛をシミュレーションしています。
ですが、実際には何一つ行動できません。
この「妄想ばかり膨らみ、現実は動かない」という構図こそが、この曲全体を貫くテーマだと言えるでしょう。
一番サビが表す「動けない恋」

一番サビでは、「愛を伝えたい」と何度も考えているにもかかわらず、結局は部屋のソファで時間だけが過ぎていく主人公の姿が描かれています。
頭の中では何度も愛を伝えている
主人公は、「こんなセリフを言ったら格好いい」「こんな告白なら成功するかもしれない」と、まるで恋愛ドラマのような展開を何度も想像しています。
しかし、それはすべて頭の中だけの出来事です。
メッセージを送ることも、電話をかけることも、会いに行くこともできません。
つまり、「愛を伝えたい」という強い気持ちはあるのに、それを行動へ移す勇気がないのです。
恋愛経験が少ない人ほど、「どう思われるだろう」「嫌われたらどうしよう」と考えすぎてしまうことがありますが、この主人公もまさにその状態なのでしょう。
「ソファに沈む」は何もできない自分の象徴
サビで描かれる「ソファに沈む」というイメージは非常に印象的です。
これは文字通りソファに座っているだけではなく、「考えすぎて何もできない自分」を象徴しているように感じられます。
恋愛の妄想だけが膨らみ、身体はまったく動かない。
自分でも「こんなことばかり考えているなんて情けない」と理解しているからこそ、どこか自虐的なユーモアも漂っています。
「日が落ちる頃に会える?」という淡い期待
主人公は「焦らない」と自分に言い聞かせています。
しかし、その直後には「今日は会えるだろうか」という期待が隠しきれません。
約束があるわけではなく、「もしかしたら会えるかもしれない」という曖昧な希望だけを抱いている状態です。
恋をしていると、相手からの一通の連絡や偶然会える可能性だけで一日中そわそわしてしまうことがあります。
この何とも言えない期待と不安が、一番サビでは見事に表現されているのです。
二番で描かれる生活感が恋の切なさを引き立てる

二番では、主人公の日常生活がさらに細かく描かれています。
朝食やカーテン、前髪など、ごく普通の一人暮らしの風景が続きます。
日常描写が孤独を際立たせている
恋愛ソングでは、デートや思い出が描かれることが多いですが、この曲では一人で過ごす部屋の描写が中心です。
それだけ主人公は一人の時間が長く、その時間すべてを彼女への想いで埋め尽くしているのでしょう。
生活感がリアルだからこそ、「隣に彼女はいない」という寂しさがより際立っています。
赤いバラや割れた目玉焼きが意味するもの
作中には印象的なモチーフも登場します。
赤いバラは熱烈な愛情の象徴であり、一方で割れた目玉焼きは理想通りにいかない現実を思わせます。
主人公の恋心はとても真剣ですが、現実とのバランスは崩れています。
情熱だけが大きくなり、現実は何も変わらない。
そんなアンバランスさを象徴する描写とも考えられるでしょう。
二番サビは自己卑下が最も強く表れる場面

曲が進むにつれ、主人公はさらに自分自身を否定するようになります。
「いい男じゃない」という自己評価の低さ
主人公が理想としているのは、スマートに愛を伝えられる男性です。
しかし、自分はそんな存在ではないと理解しています。
「好き」と言う勇気もなく、部屋で妄想ばかりしている自分。
だからこそ、「いい男ではない」という自己認識につながってしまうのでしょう。
恋愛では自信のなさが行動を止める原因になります。
そして行動できないことでさらに自信を失う。
主人公は、その負のループにはまり込んでいます。
「愛してる」と言われたい本音
主人公は、自分が愛を伝えること以上に、彼女から愛情を向けてもらいたいという願望も抱いています。
しかし、その願いが叶うほど自分は魅力的ではないとも思っています。
つまり、
「好きと言われたい」
「でもそんな資格は自分にはない」
という矛盾した感情が同時に存在しているのです。
この切ない自己否定こそが、二番サビ最大のテーマではないでしょうか。
ラストサビが残す希望と諦め

終盤になると、主人公の妄想はさらに膨らみます。
話したいことは山ほどある。
明日は一緒に過ごしたい。
もっと近づきたい。
しかし、現実は何も変わりません。
妄想だけが進み現実は止まったまま
印象的なのは、彼女自身は歌詞の中であまり姿を見せないことです。
彼女は主人公の頭の中に存在する理想像として描かれており、実際の恋愛はほとんど進展していません。
つまり、この恋は最後まで主人公の独り相撲なのです。
だからこそ、聴いている側は「あと一歩踏み出せば変わるのに」と感じてしまいます。
それでも希望を捨てきれない主人公
主人公は、自分が急に魅力的な男になれるとは思っていません。
それでも、
「いつか伝えられるかもしれない」
「いつか振り向いてくれるかもしれない」
そんな小さな期待だけは捨てていません。
諦めきれない恋だからこそ、この曲には独特の余韻があります。
恋は実らなくても、人を成長させるもの。
そんな優しいメッセージも感じ取ることができます
「愛を伝えたいだとか」というタイトルに込められた意味

タイトルにも、この曲らしい絶妙なニュアンスがあります。
普通なら「愛を伝えたい」と言い切るところを、「だとか」という少し投げやりな言葉で締めています。
これは、
「愛を伝えたいなんて言ってるけど、結局何もできていない」
という自虐にも聞こえますし、
「恋をしていると、こういう妄想ばかりしてしまうよね」
という共感にも聞こえます。
主人公は決してヒーローではありません。
臆病で、自信がなくて、行動できない普通の青年です。
だからこそ、多くのリスナーが「昔の自分に似ている」「今の自分もそうかもしれない」と感情移入できるのでしょう。
まとめ|誰もが経験する「伝えられない恋」を描いた名曲

「愛を伝えたいだとか」は、恋愛がうまくいく物語ではありません。
好きな人を想う気持ちは誰よりも強いのに、一歩踏み出す勇気だけが足りない主人公の姿が、終始リアルに描かれています。
一番サビでは妄想ばかりで動けない主人公、二番サビでは自分を「いい男ではない」と責める姿、そしてラストサビでは諦めと希望の間で揺れ続ける心が描かれ、最後まで恋は大きく進展しません。
それでも、この曲が多くの人の心をつかむのは、恋をしているときの弱さや情けなさまで肯定してくれるからではないでしょうか。
私自身、この曲を初めて聴いたときは、おしゃれで軽快なメロディーに惹かれていました。
しかし歌詞をじっくり読み解くと、その裏には誰もが一度は経験したことのある「好きなのに伝えられない」という切実な感情が隠されていることに気づきました。
恋は、必ずしも勇敢な人だけのものではありません。
臆病で、妄想ばかりして、何度も自分を責めてしまう、そんな不器用な恋もまた、本物の恋なのだと、この曲は教えてくれます。
だからこそ、これからも何度でも聴き返し、そのたびに主人公の心情に寄り添いながら、新しい発見を楽しみたいと思える名曲です。

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